寝転んだソファの上に掛かる影は蛍光灯の光と中途半端な
窓は入いる光で顔がよく見えない。
清潔にアッシュグレイの髪を分ける高そうな整髪料の匂いに、
品良く抑えられたコロンの香り。
その二つに微かに混じる紅茶の薫りだけはぼくが出した
安物のティーパックのもの。
近づいてきた顔に影は薄れて、こんなときでも消えない
眉間の皺がきゅと泣く寸前のように寄せられる。
瞳は目の中で波のように揺れていて、瞼は伏し目がちに上下した。
一つ一つの動作と造詣は絵画のように静かでありながら、
ソファを掴む白い指は無駄に力が込められて跡が残ってしまいそうだ。
結ばれた唇は何か言いたげに薄く開かれては閉じられて―――――――
(ああ、なんてじれったい!!)
ぼくは、乞おうとする律儀で無粋な唇に人差し指を差し当てて、
わななく咽元に口付けた。
阿片剤
(opiate n.)
「自己認識」なる牢獄に見られる錠の下りていないドア。
そのドアは牢獄の運動場に通じている。
CAST
赤い検事
青い弁護士