逆転裁判オンリーサイト 【電気ネズミはアポロジャイズの夢をみるか】 のブログサイトです。 最初の3つの記事はABOUTみたいな。
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ぶちまけポリバケツ

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行為のたびに付けられる唇を落とした
鬱血などと言う可愛らしいものではなく、
左右の犬歯に力を込めて残される噛み痕は
彼のきっちりとした服装からは伺えない
そこらかしこにぼくが残したものだ。






或るものは浅く、或るものは深く。






よくもまあつけたものだと我ながら呆れるくらいに散りばめられた、
歯形は痛そうだが、酷く間抜けだ。
鬱血と変わりなく強いものはむささきがかって弱いものは赤い。
男の癖にそこいらのオンナノコよりも白く、
肌触りがいい皮膚は残りやすく筋肉も薄くて痕がよく残った。







(噛み応えがないな‥‥‥‥)







「健康的な歯並びですね。」
「やってるコト自体はとっても不健康だけどね。」






まじまじとマゾなのか付けらた痕を丸く磨かれた爪でなぞって、
歯の本数を数える妙な几帳面さに苦笑を浮かべて、歯を舌で撫でる。
つるりとした無機質な感触に歯と歯の間の溝と
尖った犬歯の凹凸の質感と痕の歯の形を照らし合わせながら、
眺めていると不意に顎を掴まれてひっぱられる。
その強さに文句の一つでも言ってやろうと顎を固定されたまま口を開けば
口内をがっと開かされて指を入れられた。
掻き乱し、口の中の粘膜に刺激を与えるような手つきではなく
歯科医がチェックするような指遣いは気持ちが悪くて、
力を入れて閉じてしまおうと何度も思ったけれども
指だけは痕を残す気に成れなくてされるがままに任せる。






「楽しいわけ?」
「ええ、楽しいですよ。きみの表情が実に怪訝そうに
 歪められているところなんて‥‥
 残念なことに虫歯や歯槽膿漏がないので押しても痛みはないでしょうが。」
「健康にこれほど感謝したことはなかったね。」
「よかったですね。」













嘘を吐[つ]け












シーツの海に潜り込んで白さに同化しそうな足首に噛み付いた。
痛みに微かに跳ねる傷痕に舌を這わす。
生地の上から宥めるように軽く叩かれた背中にぬくもりは伝わらない。













歯形はどこか棘に塗れた足環にも似て。











噛む
  (べつにおいしくないのだけれど)





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*ナオカミです








幸せが、強[こわ]い。
そんなときは確認したくなる。
自分は思われているほどに
オプティミストではなくて絶えず不安がっている。
幸が薄い人生でもなく、むしろ他の人より幸せな人生を送ってきて、
隣の男が言うところの「珈琲の苦味が身に染みるにはまだ若い」、
といってもそう違わない歳だ、であるのにそう思うのは、
どんなことがあるかわからない。
未知への恐怖だとも言い換えれば言えるのだ。






(その分、幸せなんだけどな。)







知らない、と言うも幸せなことで浅墓である
と悟りつつ目の前の幸福を感受する。
ほんとうに浅墓であるのならばそんなことすら考えずに、
幸せであるのに。
そんなところだけ不器用だ、下手に賢いだけで
やり過ごし方を知らずにいる。
こればかりは経験で年を経るごとに差異は、
特に今は右横にいる男との開きっぷりには
ちょっと泣ける、あれ、少しなりとも積み重なって得ることが出来るが
急くように自分はそれを求めているのだ。
――――そのような姿勢自体が、
経験の無さと若さの証明に他ならないのだが、
人の欲求は実現可能よりも実現が不可能なほど
その可能性に反比例して高まるもので
あって、事柄が事柄だけに際限がない。
始終不安がるとは四六時中求めているとも、言える。









たとえば、隣に居られることを噛み締めたときに。
たとえば、隣を歩けることを見出すときに。
たとえば、隣で息をすることで満たされるときに。














いっしょに居れば常にあることが
こんなにも強[こわ]く、感じるなんて。
なんて幸せな人間なのだろうとも思う。
これで、茫洋と胸に根を張る不安を取り除くすべを見つければ、







(今度は、怖いか。)







その次は常用句で常套句の、幸せの怖さが待っている。
二段構えか・・・・と熟考しなおすと、なんとも果てがないように見えた。
幸せが、怖いなんていつのドラマだろうか?
杞憂に過ぎないと思うもすぐまたそれが打ち消されてしまうのは、
職業柄だろうか。
幸せに限らず何事も築くためには長い時間を要するも、
決壊するのは一瞬あれば十分なのだから。
そう、不幸を除いては――――――。







自分は唯、確かに自分は幸せであることが掴みたかったのだ。







「で‥‥なんでオレの尻をつねることに繋がるんだ、テンガロン。
 アンタのオツムはテキサスのサボテンかい?」
「たぶん、そのココロは水が溜まってる!!」
「正解者に珈琲一杯奢っちゃうぜ。」
「熱ッ‥‥ちょ、ちょっとはオレの話に耳を傾けてみようと思わない?」
「事情聴取は検察側のシゴトだろ?」
「分け隔てなくいろんな人の話を聞くことが
  人格形成をより豊かにするものだろ?」
「‥‥オレもオトコだ、懐は狭くねえ。聞いてやるぜ。」








懐が広かったら、いきなり珈琲を
ぶっかけないだろ‥‥と胸中で愚痴りつつ
珈琲で濡れて落ちてきた前髪越しに自己弁護をする。








(毎回のことだけとかっこ悪いな、オレって荘龍の前だと。)








「オマエといるとさ、ヤロー同士なのにユメみたいに幸せに感じるンだよね。」






なんでか、よくわからないけど。
ほっぺたじゃ珈琲飲んでたし。
おかしいなんて、重々似わかってるさ。





垂れて零れた珈琲が口中に苦味をポツリポツリと生じさせては消えてゆく。
気まずい雰囲気に、忘れてよ、と開きかけた頬を思いっきり抓まれる。







「そういうコトバは最近オレのとこまで電話を掛けてきやがる、
 アンタの健気なコネコちゃんに言ってやりな!! 」






タイミングを見計らったようにけたましく鳴った電話の液晶ディスプレイには
ご無沙汰の見慣れた番号が並ぶ。









わかりづらく染められた頬は自分の頬まではないにしろ赤くなっていて。







(ごめんね、オレのコネコちゃん。)














ピッ













‥‥‥‥を削除しました















爪を立てられて抓られた頬は痕が残って痛かった。






















ぱん










存外に響いた乾いた音は静かな執務室を更に静かにした。
音の割りに手は痛くない。
手を傷めないようにと殴らずに平手で叩[はた]いた
のだからあたり前であるけれどもぜんぜん痛くなかったので
なぜだか興醒めしてしまった。
御剣は打たれた微かに赤くなった頬に手もあてないで、
これはただ単に彼はそういう行動をとりそうだと思っただけ
なのだけれども、ぼくを見ていた。
こういう表情を呆然とした、と表現するのか。
色素の薄い目は叩いたぼくを責めていなくて、
責め始める前に伏せられた瞼といっしょに消える。





「ねぇ、御剣。なんで痛くないんだろう。」





掌に感じる衝撃からの熱はどんどん
その性質上で空気中に吸収されて冷めていく。
むず痒く感じた痛みは霧散していって感覚が戻ってきた。
伏せられた瞳はぼくを見返すことをしない。
まるで見の前の物体を映し、視神経を通して脳に認識させる、
と言う一連の機能を忘れてしまったかのように、
狭めて敷かれたカーペット、絨毯だろうかに定まっている。
ぼくは、きみを責めていないよ、
と何度でも言ってあげているのに、謝罪を求められているかの
ような素振りをとるので、ますますきみを許せなくなった。
許せなくなったと言うことは許せないようなことを
きみがとったかと思い返せば、理不尽なのかもしれない。
きみは、悪くない。きみはなにもしなかったんだから。
ぼくがひとりで怒っているだけで、
きみはどうしてぼくが怒っているのかわからずに
つったってしまっている状態なんだろう?
でも、ぼくは反省していない。
きみがぼくに対して意味もわからずに感じている罪悪感以上に。
ぼくがきみを叩いて、なにがいけないの?とさえ思っている。
傲慢だ、不遜だ、身の程知らずの身の丈合わずで、身勝手なんだ。
ぼくはきみを叩くたびにぼくと言うものに失望を禁じえない。
ぼくはどんどんぼくを嫌いになってしまうのに。
きみはぼくから離れずに傍にいてくれるのだから、笑ってしまう。






「殴るほうが痛いと思ってたのに。」






殴るじゃなくて叩くだろうというのは些細な矛盾である。
キャッチフレーズのセオリーだから、この台詞は。
ありがちで、用法は反対であってでも同じで。
引いていく掌の表面の赤みときみの頬の赤みに。
こんなにも残念がっているぼくというものがわからない。
御剣の瞳がチラリとぼくを窺うように泳いだ。









(ひっぱたきたい)









悪びれずにぼくは考える。
殴りたいではなくひっぱたきたいのは
自己防衛本能ではなく、痛みから逃げるというもの、
きみであるからだ、と答えが出た。














たたく
          (左頬は今日も差し出される。)



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