逆転裁判オンリーサイト 【電気ネズミはアポロジャイズの夢をみるか】 のブログサイトです。 最初の3つの記事はABOUTみたいな。
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ぶちまけポリバケツ

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その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶものに おまえのオールをまかせるな










「なんですかソレは・・・・私へのあてつけですか?成歩堂。」
「違うよ。それよりさ。」









すべての水夫が恐れをなして逃げ出して去っても
その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ








「どっかのおっきな野党の宣伝CM思い出さない?」
「あなたはそのためだけにここにきたんですか?」









そらと言ったら宇宙なジェネレーション
     (身近に同意を求めても無駄だもの、なお年頃)







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「前見たときよりもごちゃごちゃしていやがるぜ、まるほどう。」
「増えましたからね、みぬきの仕事道具。」
「いや、それだけじゃねぇな。」
「わかってるなら遠まわしはやめましょうよ。」
「アンタ好みにミルクをいれてやろうと思ったのさ。
 ま、この年だ。
 いらなくなっちまったのかい?」
「嗜好と趣向の好みは違うでしょ。」
「結構似るもんだ。」
「ハイハイ、増えたのはこれですよ。」
「ジョーバか。」
「いえ、ロデオボーイⅡです。」
「どこが違うんだか。」
「発売元とか。」
「クッ‥‥コネコちゃんにしては上出来だぜ。」
「(未だにコネコちゃんかよ。)‥‥アリガトウゴザイマス。」













ただでさえ狭く乱雑な事務所の応接室でひしめく道具たちを縮まらせている
元凶は、かなり昔に流行ったシェイップアップと言うと聞こえがいいが
とどのつまりダイエット機具である。
黒と青とシルバーの色をしたそれはそれほど大きなものではないが重く
待機電源を危惧してコンセントは抜かれているが、巻き付けられてはいない。
中途半端に伸びたコードは名は体をあらわしている様である。
そのさまにゴドーは口角をあげて無言で喉を鳴らし笑った。
恐らく、みぬきが成歩堂にと買ってきたのだろう。
自分もであるが成歩堂も年であって、気にするには充分に重ねてしまったいるのだ。









「『腹直筋と腹斜筋ね、パパ』ってとこだな。」
「娘の真似はよしてってなんでわかるんですかっ!!
 しかも鍛えられる部位まで。」
「珈琲はストレート、生き様はスマートに、だぜ。
 成歩堂。」












下腹部にあてた掌にはほどよい反発の柔らかさが伝わる、
のとマスクに強い衝撃を感じたのはほぼ同時といってよかった。














「ゴドーさんって沢山USB(メモリ)持ってますよね。
 ちゃんと指紋人称付きだし‥‥捜査資料と判例集でもいれてるんですか?」







小型でいて画面は大きく持ち運びが便利そうな
シルバーのノートパソコンの横にはこれまた高いUSBが
無造作に転がされている。
ゴドーさんは事務所に来て「ちょっと邪魔するぜ。」と言って
ぼくの答えを聞かずにコンセントを差し込んで繋ぎ、
立ち上げてかれこれ五時間近くたっていた。
蝶番の部分に時折手をあてて熱でいきなり落ちないように
はかって長期戦の構えをとっているが、ぼくの事務所だ。
‥‥内心みみっちくも電気代を払ってもらえるか気になってもいる。
事務所の懐具合はよくわかってもらっているから普段は言わずに
多めにくれる、が。
今日はパソコンを立ち上げてからずっとにらみ合いっこをテーブルの
低さから背中を丸めてやっていて声が掛けづらい。
このことを言うのだってかなり、気がいった。



「‥‥まぁな。」
「へぇ、やっぱりちゃんとしてるんですね。」
「アンタまさかロックも掛けずに重要書類をパートナーに
 預けてるのかい?」
「一応かけてます。」
「当ててやろうか?‥‥保険証書に記載されてるデータはやめときな。」
「ゴドーさんは覚えられるんですか、ロック。」
「パソコンの便利ツールでIDを覚えさせることが出来るソフトが
 無料である。
 俺みたいな指紋認証がついたUSBメモリに入れとけば
 よりセキュリティ環境が向上するぜ。
 パソコンに覚えさせると持ち主でなくともIDを必要とするサイトへの
 ログインやインターネットの無断使用が出来るだろ?
 法律に関わる仕事やってんだ、個人情報の漏洩も笑えねぇ。
 アンタを信頼している依頼者、ただでさせ立場のない薄給な
 刑事とお人よしなフリルの検事のことも考えとけよ。」
「そう‥‥ですよね。
 ぼくは甘く考えてみたいです。」
「そう凹むんじゃねぇ。
 まだヘマしてないんだ。
 これからすりゃあいいのさ。」
「ら、来月から頑張ります。」
「まずは家計簿のソフトを入れるこったな、まるほどう。」







見る間でもなく明らかな財布の軽さを実感し、
とりあえずお茶でも入れなおそうかなと席をたったと同時だった。










プツん










ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!」
「ゴ、ゴドーさん!!(なんかゴーグルに絵文字が見えたやうな)」
「アタヽ(д`ヽ彡ノ´д)ノフタ!!」
「‥‥‥(見間違いじゃないみたいだな、嬉しくないことに」
「( ´_ゝ`)」
「(どっどかで見た顔に!!)」
「(´<_` )」
「…(;´Д`)ウウッ…」
「えと、どうしたんですか?あんまり訊きたくないような、
 訊きたくないような気がしますけど。」
「き、訊いてくれるのかい。成歩堂。」
「こんなところで本名で呼ばれても嬉しくないんですけど。
 訊きますよ、少しは気になるし。」
「(#)Д`;;)…ヒドイヨ…。」
「え、なんか言いました。」
「‥‥いや別に、な。
 セーブ画面手前で切れたんだΣ(`∀´ノ)ノ アウッ」
「はっ?」
「確かに最近調子にのってメモリの使用率が85パーセントも 
 いってたからか!!
 それとも地球温暖化のせいか!?
 それかケチって空調がきいてないからか!!ヾ(゚Д゚ )ォィォィ」
「(顔文字出しながらしゃべられると、なんか殴りたく。)
 ゴドーさんは気が利いてませんね。」
「やっとこさレベルがあがって、メガテン並みの
 何アレ?最初のイベント戦闘でディア[回復魔法]が
 使えるけど、使ったら攻撃用のSPがなくてなぶり殺し
 かっ!!って具合を潜り抜け、逃げるを選んでも
 自分のターンが回ってくる前に殺されるなんて
 運の要素が強いところも何回やり直したか‥‥
 いや、わかってんだ。
 ほんとはオレの自業自得だってくらい( ゚Д゚)アライヤダ!!
 『セーブはこまめにねっ★』(声マネ、で○こちゃんパロ)
 ってセオリーだったのに。
 クッ‥‥笑ってくれよ、まるほどう。
 こんなオレを。」













もう、なんかしんどいな。












「フ━━━( ´_ゝ`)━━━ン」 
Σ(゚д゚lll)ガガーン!!!!!
「ひとんとこでゲームやるなら帰ってください。
 てか、くんな(・∀・)カエレ!!」













そのあとはどうなったかって?
‥‥USB代は懐に転がったかな。
きみから貰った資料もあったし、よかった( ´゚д゚)(゚д゚` )ネー。
あ、ちょっとフリーソフトのことがわからないから
訊いてもいい?






「今日分のデスクワークは片付いているから構わない。」
「ありがと、御剣。」





     

ゴドー検事、つωT`)ヾ (゚Д゚ )…イ㌔‥‥‥‥








心はいつでも少年だから  β版
                  (どうしようもないのはお互い様)












きゅっきゅっきゅつきゅつ




真新しいホワイトボードに黒いマジックと重要なポイントは赤、
ではなく青で書き込まれた化学式や図はしっかりと書き込まれていて
文系だったと言うことを疑いたくなる。




「このようにカルシウムは一般的に知られているような骨や歯を形成、
  維持させていくだけでなくさまざまな効用があるんだよ。
 体内のカルシウムの比率は骨や歯で99パーセント。
 ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)の形で存在、
 残りの1パーセントは細胞内に0.9パーセント分布、
 0.1パーセント(約1g)は血中に存在し、循環している。
 たかだか1パーセントだけど、まさしくされど1パーセントで
 カラダの筋肉や心臓の筋肉を収縮させてカラダを動かすにも必要だし、
 神経興奮性やホルモンの分泌の活性化、酸素活性の変化、
 各種細胞機能の調節因子として、生態機能及びその調節の他、
 血液の凝固作用にも大切な不可欠栄養素なんだ。
 さて、ここまででなにか質問はあるかい?
 オドロキくん。」




マジックをもてあそびながらどこからか調達した白衣とフレームの細い
眼鏡をいつものだるだるな服装に追加した格好はそれほど
おかしくない、むしろ意外に似合っている。
言葉遣いも問題なく、教壇に立てそうな滑らかで淀みない説明は
響くカツゼツの良い声は聞き取りやすくて向いていそうだ。
しかし。




「あの、なんのつもりなんですか?成歩堂さん。」




彼は現在進行形でピアノの弾けないピアニストなんだから。




「一言で言うとぼくの善意をわかってほしくてね。
 決して他意、特に悪意はないんだからさ。」




出発点となったカルシウムせんべえはオレに渡されたもののはずなのに
自分であけて教卓の上にぼろぼろと食べこぼしが目立つ。
苛立ちのことを気遣ってと言うか茶化してこの不可欠栄養素たっぷり
小魚粉末入りせんべえを渡したならまだよかった。
このヒトはその点について、自分が主に出発点であると言うことについての
自責の念はないのかと、ヒトの可能性を信じたくなる。
同時に信じられなくもなるけれども、触れないことにしよう。
そうじゃないとやってけないような気がする。



「えーと、じゃあ続けるよ。
 カルシウム不足からのイライラ。
 栄養補助食品でよく見かける謳[うた]い文句
 『血液中のカルシウム濃度が不足すると精神不安定に陥る』については
 さっき基礎として話した0.1パーセントのカルシウムは血清カルシウム
 とも言ってね。
 その内の約45%はアルブミンなどの蛋白と結合して、
 残りの約45%が遊離イオン化カルシウムとなるんだ。
 この血清カルシウムの濃度は常に陸上生物はこの低下に悩まされている
 (これは高濃度のカルシウムを含む海水中に生息する水生動物は
  逆に濃度を低下させる為のカルシトニン[CT]があるくらいだよ)。
 ぼくたちは内分泌せんの喉下にあたりにある上皮小体(副甲状腺)が
 塩類の代謝を調節し、血清カルシウムを上昇させる
 副甲状腺ホルモン(PTH)や活性型ビタミンDである1,25水酸化ビタミンD
 (1,25(OH)D)とかがカルシウムの濃度を保つようにしているから
 まぁ大丈夫なんだよ、そんなに気にしなくてもね。」
「調節してるって足りない分は摂取していない場合はどうなるんですか?」
「いい質問だね。その場合は自分の体から調達するんだ。
 骨粗鬆症ってわかるかな?」
「カルシウム不足からの骨密度の減少から、骨が脆くなる病気ですよね。
 女性に多くおきるっていう。」
「発病者に女性が多いのは妊娠時には胎児の生成の為に
  通常の3倍のカルシウムが必要になることと、言いづらいけど
 月のものの際にカルシウムが体内から排出されてしまうのやら
 いろいろあるんだけど、話せば長いしデリケートだからおいといて。
 最近では性別年齢関係なく起きる生活習慣病みたいなところがあるから
 注意しないとね。」
「そこまでは知りませんでした‥‥って!!」
「って?」




つい乗せられてしまったけれど成歩堂さんのペースにひきこまれてる。
ためにはなるけど流されてるよ。
色々‥‥。



「オドロキくんのこともおいといて。
  血清カルシウムが足りない場合は骨からカルシウムをとる。
 内部の骨髄からだから見た目はそうでなくとも中がすかすかに
 なってしまうんだ。
 精神に影響を及ぼすときには重度の骨粗鬆症に陥っているはずだから
 それどころじゃないだろうね。
 ちなみに血液中のカルシウム濃度は8,5~10,2mg/dlくらいが
 いいんだ。
 オドロキ君の年齢の場合はまだ成長に使われる可能性も少なからずは
 あるからカロリーや脂肪分を気にせずに牛乳や乳製品。
 カルシウムを体内に吸収しやすくする為にビタミンDと鉄分も
 一緒に摂るとベストだね。
 割とカルシウムってのは必要な癖して吸収されにくい栄養素なんだ。」
「で‥‥善意にどう繋がるんですか?」
「ああ、それ?忘れてた。」
「忘れてたって、どうでもいいことみたいにっ!!」
「授業中は静かにしなくちゃ、ダメだよ。オドロキくん。」
「先生ぶらないでください。」
「ノリが悪いな。せっかくホワイトボートとか白衣とか買ってきたんだから。」
「どっからそのお金は出てくるんですか。」
「ノリのいいスポンサーがいるんだよ。」
「笑っても誤魔化されませんからね。」
「全部教えちゃったら、授業にならないから。
 刺激から筋小胞体の[カルシウムイオン]と[トロポニン]の結合によるトロポミオシンの変異と
 ミオシン頭部へのATPの結合。の作用によって起こるものがオドロキくんは使う
 ことが多いから、気になってね。」
「はぁ‥そうですか。」
「それとね。このときは先生じゃなくってハカセって呼んでよ。」
「わかりましたよ、ハカセ。」
「敬意が感じられないなぁ。」






尊敬の念の薄さに納得がいかず、首を傾けていたが、
特に気にしたふうもなく。
仕事の時間だと、そのままの格好で出ていくなるほどさんを見送って。




なんだか、どっと疲れた。



3分の1は減ってしまったカルシウムせんべえを食べると
その甘さに牛乳があいそうだと口元がほころぶ。
‥‥でもほっとできない。









牙琉は一流の弁護士でその稼ぎは事務所の調度品を見れば、一目。
であるのに、お茶請けは意外とどこで売っているのかと思うものを買ってくる。
コンビニでは見かけない300円台の袋詰めの個別包装のお茶請けは
恐らくスーパーで買ったのだろう。



(自分で行ったんだよな。)



一流で一流になにかと拘る癖して、新聞の記事よりも挟まれている
チラシに長く目が留められていたりする変なところが小市民。
普段着であるスーツで行ったのかと考えると笑ってしまう。
茶色い木製の平たく丸い器には、祖父母のうちにいったときに
見たような茶菓子が詰められていて、自分の目から見ても
高そうな口当たりのいいティーカップとかなり合わない。
男が個別包装の袋をしっかり袋のまま開けるようにぎざぎざから
切らずにパンと開いて半ばだけ菓子をだして齧りつつ、ティーカップを
傾ける姿は、腰を降ろす座り心地が良くて艶の良い革張りのソファ
であるから噴出してしまいそうだ。
合うものと言えばこの名前だけ。


[ポエムケーキ]と書いてあるなんの変哲もない、マドレーヌのような菓子。
どこのあたりが[ポエム]なのか検討もつかない。
ハート型や花型ならファンシーで、それはそれでそれを齧る姿なんてもっと
見ていられない、少女趣味とポエムと納得できるような気がする。



「しっくりこない、と言った顔ですね。」
「たしかに今の格好はこの事務所にしっくりこないんじゃない?」
「パーカーにニット帽子に素足でサンダルで無精ひげで‥‥
 この事務所にふさわしい客人には見えませんからね。」
「きみね‥‥。」




冗談ですよ。と笑う男はどこまで本気なのか‥‥きっと本気だ。
爪にまで身なりを気にするのにどうしてそこに気が回らないのか。
きっと自分が客であるからこのような菓子が振舞われるのだと思うことにして、
以前依頼人が謝礼の品として買ってきた有名点のケーキを食べていたときよりも
自然にリラックスして楽しんでいるようだと言うのもなかったことにして、
出された、紅茶とケーキに手を伸ばした。




「『嫌いなものは殺してしまう、それが人間のすることか?』
  『憎けりゃ殺す、それが人間ってもんじゃないのかね?』」
「また、唐突に物騒ですね。」
「個別包装なら袋にそれくらい入れられるって。」
「お茶時にみたいものでないし、第一それは[詩]ではないでしょう?」
「じゃあさ、牙琉ならなんて入れるんだい。」




「『ばらよ、きよらかな矛盾、
  あまたの瞼の下で、だれの眠りでもないという
  よろこびよ。』」




すぐには出ず、少し間をもって。




ぼくは、ばらと言う花が浮かばなかった。




「パッケージに合うと思う?」
「合わない、ですかね?」



丸文字で書かれた名前にチープな味。
だいそれた、詩だ‥‥。




出典は思い出せないと言うから、調べてみたら。
とある詩人の墓碑銘で。
お互い、ロクなものを覚えていやしないが、流れる時間は穏やかなものだった。



設定だけは[ロジックとリリックと逆転の日々]。
時制は3-3後となっております。



















法廷のカフェテリアはカフェといいながらみそラーメンなどの場に
そぐわないレパートリーが豊富なファミリィーレストランに
近いしろものである。
値段は学生がお世話になるであろう価格でありながら確かなもので
ゴドーもよく足を運んでいた・・・・ただし件の珈琲は香りが
気になる程度で珈琲自体は持参である。
今日は傍聴者が多かったのかカフェの席は埋まり、
ホールの店員が忙しく右へ左へと注文をとったり、
品を運んでいたりする。
いつも座っている一人席を見れば空いておらず、
空いている席は一つだけ。





何処にいてもすぐに目に付くギザギザの髪に見慣れたスーツは
自分の記憶にある女と同じデザインのジャケット&スカート。
違いはその色が黒ではなく青であることと首元になびくスカーフ。
男である時と違い少し降りた前髪は特徴的な眉を軽く隠し、
目の前の女があの男であることを一瞬忘れてしまいそうになる。
それと同じくしてふと揺らぐ珈琲の闇色の凝りのような感情が
また一層激しく燻るのだ。
今度はあの男でなく今はもういないあの女の姿と重なる。
どちらにしろ、そう抱く感情は変わらない。
男であろうが女であろうが、この女があの男であることと同じように。





マスク越しであるから視線に気付かないのか・・・・違う。
他の客からはその胸元も大きく開くことが当たり前であると
納得出来る胸と短いスカート丈であるのに行儀悪く開かれた足に
注がれた好色な視線にも気付かずに、あの女――――成歩堂は
手に持ったマグカップに目を落とし、
何やらあの尖った頭で考えている。
微かな珈琲の香りが煎れられてからの時間の経過を告げていた。
甘いとしか思えない言動だが、手の内のミルクの一滴も落ちていない
暗闇はブラック、スティック砂糖の袋もテーブルの上にはない。
ここで会ってしまったことと、珈琲の飲み方にイラつき
口の中で小さく舌打ちをする。
午後を楽しむ客たちはゆったりと椅子に背を預け、
その腰は浮きそうもない。
仕方ない、そういい聞かせてゴドーは成歩堂の向かいの
椅子の背を引いた。








「向かいの席、邪魔するぜ。」
「・・・・あっ、どうぞ・・・・。」









少し身を竦ませてから、また目はマグカップのうちに戻る。
敵意は・・・・あからさまだ。
わかるように態としている。
そうであるのに、目の前の女は自分ではなく珈琲を眺める。
眺めたところで何があるでもないのに、さざなみが胸に立った。
疑問を抱いているのか気に取り留めていないのか、
込められた意を何も言わず感受する、その態度が胸を悪くする。








(挽いた豆の分量を間違えたみたいだぜ・・・・)








嫌味の一つでも、吐いてやろうと思っていたのに
微妙な空気がその言葉を塞ぐ。
自分が座ったことによってさらに集まった周囲の視線をゴドーは感じた。








こくり。








と喉が凹凸も少なく冷めた珈琲を嚥下する。
女の顔の眉間には皺が寄って、溜息がその口紅も塗っていない
自然な色合いの唇から漏れた。







(とんだ甘ちゃんじゃねえか。)







「アンタ、この闇色の素晴らしさがわからねぇっていうクチかい?」
「ええ、そういうクチですよ。」




苦々しく返す声は高さの差異はなくただ細い。




「無理せずにコネコちゃんはコネコちゃんらしくミルクでも舐めてな。」
「コネコじゃなくたってネコならミルクは舐めますよ・・・・飲みますけど。」
「どっちにしろ、この飲み込まれちまいそうな深い色と立ち昇る苦く渋く
甘いアロマを台無しにするのは違いねえ。」
「自分には美味しいんですよ、匂いも甘くていいじゃないですか。」
「だったら入れてとっと飲んじまいな。見てられねえぜ。」
「それは出来ません。」





遅遅として減らない黒は3分の2。
午後から入っている一件にまで時間は少ない。





「見えねぇのかい、アンタにはこの客の入りが。
 相当に迷惑な客だぜ。」
「何も頼まず、持参の珈琲を飲むあなたには言われたくありません。」
「クッ・・・・オレはここの常連だぜ?」
「(なんでみんなこの人になにも言えないんだろう)・・・・・・・・。」
「話してみな。・・・・聞いてやるぜ。」
「証人じゃないんですけどね。・・・・笑いませんか?」
「さぁな。話してみなけりゃわからねぇ・・・・そうだろ?」
「笑わないでくださいね。」







何を言っても笑ってやるつもりだった。
それが真剣な顔であればあるほど、堅かった。







「真宵ちゃんが、最近牛乳を飲み始めたんです。」






証人として出てきた五十嵐将兵にウェイトレス姿で
お子様扱いをされたことがアタマに来たらしく、と言う件から知れた動機。
俗信であると言われてもその年頃(に見えないがだからこそ)。
単純で、単純な。
望むものには与えられず。





「あのお嬢ちゃんに付き合わされていやになっちまったってところか。」
「違いますよ!!牛乳は一日1ℓお金があれば飲みたいと
 思ってますから。」
「なら、なんだい?」
「それは・・・・・・・・・だって、その。女性は牛乳を飲むと
 ・・・・・・・になるんですよね。」
「よく聞こえねぇな。」
「だから、そっ、その胸が、になるって。」
「・・・・・・・・つまりあんたの胸がそうなのはそのおかげって
 言いたい・・・・・。」
「ストレース過ぎですよ、なに言ってアンタ。」
「珈琲はブラック、そういうこった。大きくなったこ・・・・」
「い、いいい異議有り!」
「突き付けたい証拠品はどうした。弁護士さんよォ。」







差し出されたのは冷めたブラック珈琲。
牛乳は一滴も入っていない。







「いつもは牛乳を入れるんです。でもぼくは今、入れていない。
 これが何よりの証拠です!」
「・・・・・・・・で、どうした。」
「頑張って、察してください。」
「気付いてほしいヲトメ心かい、似合わない。」
「似合わなくて結構ですよ。」
「言わなきゃ、わからねぇ。
 残念だがオトコってヤツはそういうモンなんだぜ。」





業を煮やして前に身を乗り出し、両腕に挟まれた格好となった胸に
乳牛を育てる際にしようする使用する成長促進ホルモンが作用すると
言うなんとも怪しい説を思い出す。
無意識にしても性質の悪い、所作はどうすればオトコが動くのか
わかっているようにも見えた。














「ぼくはこれ以上大きくなって欲しくないから!
 牛乳を抜いてるんです。苦くても!!」












頑張ってるんですよ!!!とエクスクラメーションマークが三個分
ついた法廷よりも響いたその声はカフェテリアの外までも響き、
今まで向いていなかった客だけでなく店員、廊下の係官などまで
振り向いた。
一部の眺めていた客で大急ぎでテーブル上の紙ナプキンを
引っ張り出した者もいた。
発した本人は肩と胸を大きく上下させながら、言い切ったと言う顔をしていたが、
すぐ自分が何を言ったのか理解し、目を白黒させた。
見えないが、顔も紅潮しているのだろう。







その健闘に敬意を評してデザートの一品も頼む余裕がない弁護士に
熱いチョコレートを奢ってやることにしたのは。










(気紛れってヤツだろ、なぁ。)










掌に感じていた珈琲の熱はいつしかなくなっていたなんて。















霊媒師の努力は目立った成果は得られず、あまった牛乳を
押し付けられさらに秀でてしまったと言うのは余談である。

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