「前見たときよりもごちゃごちゃしていやがるぜ、まるほどう。」
「増えましたからね、みぬきの仕事道具。」
「いや、それだけじゃねぇな。」
「わかってるなら遠まわしはやめましょうよ。」
「アンタ好みにミルクをいれてやろうと思ったのさ。
ま、この年だ。
いらなくなっちまったのかい?」
「嗜好と趣向の好みは違うでしょ。」
「結構似るもんだ。」
「ハイハイ、増えたのはこれですよ。」
「ジョーバか。」
「いえ、ロデオボーイⅡです。」
「どこが違うんだか。」
「発売元とか。」
「クッ‥‥コネコちゃんにしては上出来だぜ。」
「(未だにコネコちゃんかよ。)‥‥アリガトウゴザイマス。」
ただでさえ狭く乱雑な事務所の応接室でひしめく道具たちを縮まらせている
元凶は、かなり昔に流行ったシェイップアップと言うと聞こえがいいが
とどのつまりダイエット機具である。
黒と青とシルバーの色をしたそれはそれほど大きなものではないが重く
待機電源を危惧してコンセントは抜かれているが、巻き付けられてはいない。
中途半端に伸びたコードは名は体をあらわしている様である。
そのさまにゴドーは口角をあげて無言で喉を鳴らし笑った。
恐らく、みぬきが成歩堂にと買ってきたのだろう。
自分もであるが成歩堂も年であって、気にするには充分に重ねてしまったいるのだ。
「『腹直筋と腹斜筋ね、パパ』ってとこだな。」
「娘の真似はよしてってなんでわかるんですかっ!!
しかも鍛えられる部位まで。」
「珈琲はストレート、生き様はスマートに、だぜ。
成歩堂。」
下腹部にあてた掌にはほどよい反発の柔らかさが伝わる、
のとマスクに強い衝撃を感じたのはほぼ同時といってよかった。