逆転裁判オンリーサイト 【電気ネズミはアポロジャイズの夢をみるか】 のブログサイトです。 最初の3つの記事はABOUTみたいな。
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設定だけは[ロジックとリリックと逆転の日々]。
時制は3-3後となっております。



















法廷のカフェテリアはカフェといいながらみそラーメンなどの場に
そぐわないレパートリーが豊富なファミリィーレストランに
近いしろものである。
値段は学生がお世話になるであろう価格でありながら確かなもので
ゴドーもよく足を運んでいた・・・・ただし件の珈琲は香りが
気になる程度で珈琲自体は持参である。
今日は傍聴者が多かったのかカフェの席は埋まり、
ホールの店員が忙しく右へ左へと注文をとったり、
品を運んでいたりする。
いつも座っている一人席を見れば空いておらず、
空いている席は一つだけ。





何処にいてもすぐに目に付くギザギザの髪に見慣れたスーツは
自分の記憶にある女と同じデザインのジャケット&スカート。
違いはその色が黒ではなく青であることと首元になびくスカーフ。
男である時と違い少し降りた前髪は特徴的な眉を軽く隠し、
目の前の女があの男であることを一瞬忘れてしまいそうになる。
それと同じくしてふと揺らぐ珈琲の闇色の凝りのような感情が
また一層激しく燻るのだ。
今度はあの男でなく今はもういないあの女の姿と重なる。
どちらにしろ、そう抱く感情は変わらない。
男であろうが女であろうが、この女があの男であることと同じように。





マスク越しであるから視線に気付かないのか・・・・違う。
他の客からはその胸元も大きく開くことが当たり前であると
納得出来る胸と短いスカート丈であるのに行儀悪く開かれた足に
注がれた好色な視線にも気付かずに、あの女――――成歩堂は
手に持ったマグカップに目を落とし、
何やらあの尖った頭で考えている。
微かな珈琲の香りが煎れられてからの時間の経過を告げていた。
甘いとしか思えない言動だが、手の内のミルクの一滴も落ちていない
暗闇はブラック、スティック砂糖の袋もテーブルの上にはない。
ここで会ってしまったことと、珈琲の飲み方にイラつき
口の中で小さく舌打ちをする。
午後を楽しむ客たちはゆったりと椅子に背を預け、
その腰は浮きそうもない。
仕方ない、そういい聞かせてゴドーは成歩堂の向かいの
椅子の背を引いた。








「向かいの席、邪魔するぜ。」
「・・・・あっ、どうぞ・・・・。」









少し身を竦ませてから、また目はマグカップのうちに戻る。
敵意は・・・・あからさまだ。
わかるように態としている。
そうであるのに、目の前の女は自分ではなく珈琲を眺める。
眺めたところで何があるでもないのに、さざなみが胸に立った。
疑問を抱いているのか気に取り留めていないのか、
込められた意を何も言わず感受する、その態度が胸を悪くする。








(挽いた豆の分量を間違えたみたいだぜ・・・・)








嫌味の一つでも、吐いてやろうと思っていたのに
微妙な空気がその言葉を塞ぐ。
自分が座ったことによってさらに集まった周囲の視線をゴドーは感じた。








こくり。








と喉が凹凸も少なく冷めた珈琲を嚥下する。
女の顔の眉間には皺が寄って、溜息がその口紅も塗っていない
自然な色合いの唇から漏れた。







(とんだ甘ちゃんじゃねえか。)







「アンタ、この闇色の素晴らしさがわからねぇっていうクチかい?」
「ええ、そういうクチですよ。」




苦々しく返す声は高さの差異はなくただ細い。




「無理せずにコネコちゃんはコネコちゃんらしくミルクでも舐めてな。」
「コネコじゃなくたってネコならミルクは舐めますよ・・・・飲みますけど。」
「どっちにしろ、この飲み込まれちまいそうな深い色と立ち昇る苦く渋く
甘いアロマを台無しにするのは違いねえ。」
「自分には美味しいんですよ、匂いも甘くていいじゃないですか。」
「だったら入れてとっと飲んじまいな。見てられねえぜ。」
「それは出来ません。」





遅遅として減らない黒は3分の2。
午後から入っている一件にまで時間は少ない。





「見えねぇのかい、アンタにはこの客の入りが。
 相当に迷惑な客だぜ。」
「何も頼まず、持参の珈琲を飲むあなたには言われたくありません。」
「クッ・・・・オレはここの常連だぜ?」
「(なんでみんなこの人になにも言えないんだろう)・・・・・・・・。」
「話してみな。・・・・聞いてやるぜ。」
「証人じゃないんですけどね。・・・・笑いませんか?」
「さぁな。話してみなけりゃわからねぇ・・・・そうだろ?」
「笑わないでくださいね。」







何を言っても笑ってやるつもりだった。
それが真剣な顔であればあるほど、堅かった。







「真宵ちゃんが、最近牛乳を飲み始めたんです。」






証人として出てきた五十嵐将兵にウェイトレス姿で
お子様扱いをされたことがアタマに来たらしく、と言う件から知れた動機。
俗信であると言われてもその年頃(に見えないがだからこそ)。
単純で、単純な。
望むものには与えられず。





「あのお嬢ちゃんに付き合わされていやになっちまったってところか。」
「違いますよ!!牛乳は一日1ℓお金があれば飲みたいと
 思ってますから。」
「なら、なんだい?」
「それは・・・・・・・・・だって、その。女性は牛乳を飲むと
 ・・・・・・・になるんですよね。」
「よく聞こえねぇな。」
「だから、そっ、その胸が、になるって。」
「・・・・・・・・つまりあんたの胸がそうなのはそのおかげって
 言いたい・・・・・。」
「ストレース過ぎですよ、なに言ってアンタ。」
「珈琲はブラック、そういうこった。大きくなったこ・・・・」
「い、いいい異議有り!」
「突き付けたい証拠品はどうした。弁護士さんよォ。」







差し出されたのは冷めたブラック珈琲。
牛乳は一滴も入っていない。







「いつもは牛乳を入れるんです。でもぼくは今、入れていない。
 これが何よりの証拠です!」
「・・・・・・・・で、どうした。」
「頑張って、察してください。」
「気付いてほしいヲトメ心かい、似合わない。」
「似合わなくて結構ですよ。」
「言わなきゃ、わからねぇ。
 残念だがオトコってヤツはそういうモンなんだぜ。」





業を煮やして前に身を乗り出し、両腕に挟まれた格好となった胸に
乳牛を育てる際にしようする使用する成長促進ホルモンが作用すると
言うなんとも怪しい説を思い出す。
無意識にしても性質の悪い、所作はどうすればオトコが動くのか
わかっているようにも見えた。














「ぼくはこれ以上大きくなって欲しくないから!
 牛乳を抜いてるんです。苦くても!!」












頑張ってるんですよ!!!とエクスクラメーションマークが三個分
ついた法廷よりも響いたその声はカフェテリアの外までも響き、
今まで向いていなかった客だけでなく店員、廊下の係官などまで
振り向いた。
一部の眺めていた客で大急ぎでテーブル上の紙ナプキンを
引っ張り出した者もいた。
発した本人は肩と胸を大きく上下させながら、言い切ったと言う顔をしていたが、
すぐ自分が何を言ったのか理解し、目を白黒させた。
見えないが、顔も紅潮しているのだろう。







その健闘に敬意を評してデザートの一品も頼む余裕がない弁護士に
熱いチョコレートを奢ってやることにしたのは。










(気紛れってヤツだろ、なぁ。)










掌に感じていた珈琲の熱はいつしかなくなっていたなんて。















霊媒師の努力は目立った成果は得られず、あまった牛乳を
押し付けられさらに秀でてしまったと言うのは余談である。

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